季節の花々に人生を重ねて   百日紅サルスベリ

季節の花
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・季節の花に人生を重ねて

(8月の花より)
 サルスベリ(百日紅)


 たった一度の人生。開花する時季を少しでも長くしたいもの。
樹皮が薄く滑らかで、あの木登り上手の猿であっても滑って登りにくい木
が「サルスベリ」です。樹高3メートルから6メートルのミソハギ科の落葉
高木で、中国南部産といわれています。日本への渡来は古く、鎌倉時代の書
物にその名が残っているほど。花の色は淡紅、薄紫、白など多様です。ほぼ
円形の縮んだ六枚の花弁が円錐形になって枝の先に集まっています。成果か
ら10月ごろまでの炎暑のなかを風情豊かに100日も咲き続けることから「百日
紅」(ひゃくじつこう)の名も付いています。さらに王宮に植えられること
を意味する「紫微花」と呼ばれることもあります。寺院の庭で良く見かけ、
盆栽や花壇でも鑑賞されています。植物分類ではミソハギ科サルスベリ属で
、ミソハギはお盆の供え花として用いられる多年草です。禊のハギから転訛
したと言われています。汚れを払うために禊にこの花を飾ったということで
しょう。


朝鮮半島に「百日紅」についてこのような伝説が残っています。海岸に近
い村で毎年、水難を避けるために竜神に生贄として少女を捧げる決まりがあ
りました。ある年、生贄(いけにえ)に選ばれた少女は覚悟を決め海岸で竜神を
待っていました。そこにある王子が旅の途中通り掛かり、少女に一目ぼれし
た王子は生贄になっていた少女を助けます。
王子と少女は恋におちましたが王子は旅を続けなければならず、少女と離
れ離れになってしまいます。王子と少女は100日後に再会を果たす約束をし王
子は旅に出ました。しかし、少女に会いに戻ってきたら少女は亡くなってお
り、再会を願っていた王子は嘆き悲しみました。
それから少女の眠っているお墓に墓参りに行くと、墓から二本の木が生え
て紅と白の花を咲かせました。花は100日間も咲き続けたので、人々はこの花
を「百日紅」と名付けたそうです。木として生まれ変わった少女が王子のこと
を待ち続けている姿が「あなたを信じる」という花言葉の由来になり、100日
間待ち続けながら約束を果たせなかった少女の生まれ変わりとして「百日紅
(ヒャクジツコウ)」と呼ばれるようになったそうです。切ない話ですが、
サルスベリが100日間も咲き続けることを人々は驚きの気持ちで眺めていたの
でしょう。


サルスベリのようにたった一度しかない人生の「開花期間」を長くしたい
と思うのは人の情です。厳しい夏の暑さにめげることなく、百日もの長きあ
いだ花を咲かせ続ける姿は、どんなに厳しい環境であってもしっかり生き抜
く気概を見せているように思えます。天寿を
まっとうするという人としての努め。サルスベリから教えてもらいました。

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