季節の花に人生を重ねて クズ 彼岸花

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季節の花に人生を重ねて
(9月の花より)
 クズ(彼岸花)


 不死鳥に似た生命力で、強く生きよと呼びかけてくる。
秋の七草のひとつ、フジやハギと同じマメ科の植物です。茎は6メートルを
超える長き蔓にり、一つの柄に3枚の大きな葉が付きます。花はフジに似た
紫色で、甘い香りを漂わせる可憐な蝶型に開きます。ただ、鉄道線路のそば
や土手で蔓を伸ばして幾重にも重なった葉で花を隠す姿は趣に欠け、秋の野
を殺風景にする雑草としか思えません。なぜ七草に入っているのか、首を傾
げたくなりますが、万葉集にはクズを詠んだ歌が17首あります。かつては多
くの人に愛された花でした。
 クズは日常必須の有用植物で直径20センチ、長さ1メートルにもなる根から
「クズ粉」がとれ、食用だけでなく、発汗、解熱の薬になります。クズの根
に滋養豊富なデンプンが含まれることを発見したのは、南北朝時代
(1336~1392)南朝に属した藤原与右衛門という武士だったと伝えられてい
ます。クズ粉は昔から病人や子供の栄養食として用いられ、高級和菓子の原
材料として珍重されています。
 大和の国、今の奈良県は古来有名な葛粉の産地で、同国吉野郡の地名の国
栖(くず)に由来すると言われています。また、長くてしなやかな蔓は家を
建てる時に柱を固定させるのになくてはならない道具になりました。鉄釘の
なかった昔は葛蔓で結ったものが庶民の家です。これを葛屋と呼びました。
蔓を編めば籠が出来ます。煮て流水で洗った後に繊維を取り出せば、衣服に
仕立てることも出来ました。葛布の衣服は耐久性があり、強靭で、庶民の労
働着、貴族には旅行着として重宝されたのです。
蔓を切断しても、節の部分から根を生やし、新しい生命体になることも古代
人は知っていました。その生命力を不死鳥のごとくとなぞられ、寿命が葛蔓
のように長く伸びるように、また苦難にあっても跳ね返す逞しさを願って親
しみを抱いていたようです。蔓を最大に伸ばして花を咲かせるクズは私たち
に「強く生きよ、苦難にたじろぐな」と呼びかけているようです。クズのよ
うに不屈の努力をいただきたいと思います。

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