・季節の花に人生を重ねて
(11月の花より)
ムラサキシキブ
生命が脈々と受け継がれてゆく。他の力を借りてでも生きることは大事。
晩秋の山野を歩くと小さな紫色の丸い実が群がってなっている野生の木に出くわします。和名のムラサキシキブはこの優美な実を「源氏物語」の作者である平安朝の才媛、紫式部になぞって名付けました。「実紫」という直接な別名もあります。
クマツヅラ科の落葉低木で高さ2メートルほど。高いもので3メートル。枝は斜上し、長い楕円形の葉が対生しています。初夏の頃、葉の付け根ごとに薄紫の芳香のある小さな花を多数つけます。そして10月から11月に直径、4ミリの丸い実がたくさんできるのです。
実は葉が落ちてからも残り、冬枯れの山野で落葉したあとに残る紫の実が目を引きます。
別名「トリノキ」とも呼ばれることがあります。小鳥がよろこんで食べる果実でもあるのです。小鳥たちは食べたあとで種子を地上に播いて新しい世代の実がなることを手助けします。また、木部は固く、粘り気があるので道具の柄やはしなどに活用されます。
我が国では北海道の南部から本州四国九州に、世界でも熱帯から温帯にかけ広く分布しています。ただし、アフリカにはいません。
仲間は140種類もあり、実が白いものは「シロシキブ」、実の大きいものは「オオムラサキシキブ」などと呼ばれます。
ムラサキシキブが小鳥に寄って種子がばらまかれ、生命が脈々と受け継がれていくように、生命は自らの力だけでは生き得てはいないことを思い知るのです。思いもしないものが私たちを助け、また私たちも、思いがけないところで他の生命を助けていることも少なくないのです。
結果、私たちは生命を疎かにしてはならないのです。
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